ワークフロー自動化プラットフォームn8nに発覚したCVSS 9.9の深刻なRCE脆弱性

2026-01-05
Cyber Security News 編集部/ 脅威インテリジェンスアナリスト
#インシデント

ワークフロー自動化プラットフォームn8nに潜む深刻な脅威

オープンソースのワークフロー自動化プラットフォームであるn8nは、その柔軟性と拡張性から、世界中の企業や開発者に広く利用されています。このプラットフォームは、視覚的なインターフェースを通じて様々なアプリケーション、サービス、APIを接続し、複雑な自動化プロセスをコードなしで構築できるという利点を提供しています。しかし、この利便性の裏で、極めて深刻なセキュリティ上の欠陥が発覚しました。

2025年12月23日、セキュリティ研究者のFatih Çelik氏によって発見され報告されたこの脆弱性は、CVE-2025-68613として追跡されており、CVSSスコアは最大10.0のうち9.9という「緊急」レベルに分類されています。この欠陥が悪用された場合、認証済み攻撃者がn8nインスタンス上で任意のコードを実行できる可能性があり、その結果、システム全体の完全な侵害につながる恐れがあります。

この脆弱性は、単なるデータ漏洩に留まらず、基盤となるシステムへの完全なアクセスを許すリモートコード実行(RCE)の脅威をもたらします。攻撃者は、機密データへの不正アクセス、ワークフローの改ざん、さらにはシステムレベルの操作の実行を通じて、組織の運用に壊滅的な影響を与える可能性があります。この発見は、自動化ツールのセキュリティに対する新たな警鐘を鳴らすものです。

The Hacker Newsの報道によれば、npmの統計ではn8nパッケージが週に約57,000回ダウンロードされており、その普及度を鑑みると、この脆弱性の影響は非常に広範囲に及ぶことが懸念されます。企業は、この脅威の深刻度を認識し、迅速な対応が求められています。セキュリティ専門家は、可能な限り速やかに推奨されるアップデートを適用するよう強く勧告しています。

脆弱性の核心:サンドボックスからの脱出を許す式評価メカニズム

CVE-2025-68613の技術的な核心は、n8nのワークフロー式評価メカニズムに存在します。n8nのメンテナーが指摘するように、「特定の条件下で、ワークフロー設定中に認証済みユーザーによって提供される式が、基盤となるランタイムから十分に分離されていない実行コンテキストで評価される可能性がある」という問題です。これは、ユーザーが入力した式が、本来意図されたサンドボックス環境を超えて、システムレベルのコマンド実行を可能にする「式インジェクション」攻撃を許容することを意味します。

Orca Securityの分析では、この問題は「不十分なサンドボックス分離」に起因するとされており、ユーザーが提供する式が意図された実行コンテキストから脱出することを許してしまうと説明されています。特別に細工されたワークフロー式を送信することで、攻撃者はn8nプロセスの権限でOSレベルのコマンドを実行し、実質的にホスト上でリモートコード実行を達成することが可能になります。

この脆弱性の悪用には認証が必要ですが、ワークフローの作成または編集権限以上の特権は必要ありません。これは、正規のユーザーアカウントを持つ攻撃者であれば、比較的容易にシステムを掌握できることを示唆しています。Sangfor FarSight Labsも、この脆弱性が認証済み攻撃者によって悪用され、任意のコード実行につながる可能性があると報告しており、その深刻度を裏付けています。

このようなサンドボックスエスケープは、アプリケーションがユーザー入力を処理する際のセキュリティ設計の根本的な欠陥を露呈します。特に、n8nのような自動化プラットフォームでは、ワークフローが機密データやシステムリソースにアクセスする可能性が高いため、この種の脆弱性は極めて危険です。攻撃者は、このメカニズムを悪用して、ワークフローのロジックを操作したり、機密データを窃取したり、さらには基盤となるインフラストラクチャに侵入したりする可能性があります。

広範な影響範囲:数万のインスタンスが晒された危機

このn8nの脆弱性(CVE-2025-68613)の影響範囲は、その普及度と利用方法を考慮すると、非常に広範に及びます。Censysの攻撃対象領域管理プラットフォームのデータによると、2025年12月22日時点で、103,476ものn8nインスタンスが潜在的に脆弱な状態にあるとされています。これは、世界中の多数の組織がこの深刻なリスクに晒されていることを明確に示しています。

脆弱なインスタンスの地理的分布を見ると、米国、ドイツ、フランス、ブラジル、シンガポールに多数が集中していることが判明しています。これらの地域に拠点を置く企業や、これらの地域でサービスを提供している企業は、特に注意が必要です。n8nは、自己ホスト型デプロイメントや組み込み自動化環境で広く利用されており、特にインタラクティブなワークフロー編集が有効になっている環境では、その影響が顕著に現れる可能性があります。

影響を受けるバージョンは、0.211.0以降のすべてのバージョンから、修正版である1.120.4、1.121.1、および1.122.0未満のバージョンです。この広範なバージョン範囲は、多くの既存のn8nユーザーが脆弱な状態にあることを意味します。Orca Securityは、脆弱なn8nバージョンに依存する他のサービスやプラットフォームも影響を受ける可能性があると警告しており、サプライチェーン全体への波及効果も懸念されます。

この脆弱性が悪用された場合、単一のn8nインスタンスの侵害に留まらず、そのインスタンスが接続している他のシステムやサービスへの横展開、機密データの流出、自動化ロジックの破壊、さらにはサービスの中断や環境全体の完全な侵害につながる可能性があります。企業は、自社のn8n環境がこの脆弱性の影響を受けていないか、緊急に確認する必要があります。

攻撃シナリオと潜在的リスク:認証済み攻撃者によるシステム掌握

n8nの脆弱性CVE-2025-68613は、認証済み攻撃者によって悪用されることで、非常に広範かつ深刻な攻撃シナリオを可能にします。攻撃者は、まず有効なユーザー認証情報を取得する必要がありますが、これはフィッシングやクレデンシャルスタッフィング、あるいは他の脆弱性を介して達成される可能性があります。一度認証に成功すれば、ワークフローの作成または編集権限があれば、追加の特権なしに任意のコード実行が可能となります。

この脆弱性が悪用された場合、攻撃者はn8nプロセスと同じ権限でオペレーティングシステムレベルのコマンドを実行できます。これにより、システムの完全な制御を奪い、機密データへの不正アクセスや流出、既存のワークフローの改ざん、あるいは悪意のある新しいワークフローの作成が可能になります。例えば、攻撃者はn8nがアクセスできるデータベースから顧客情報を窃取したり、重要なシステムプロセスを停止させたり、バックドアを仕込んだりすることができます。

Orca Securityは、この脆弱性の悪用が、自動化ロジックの操作や破壊、さらには周辺インフラストラクチャへの横展開、サービスの中断、または環境全体の完全な侵害につながる可能性があると警告しています。特に、インターネットに公開されているn8nインスタンスや、複数のテナントが利用する環境では、そのリスクは一層高まります。攻撃の容易さと深刻度を考慮すると、この脆弱性は「高リスク」と評価されるべきです。

現時点では、この脆弱性に対する広く報告された公開の概念実証(PoC)エクスプロイトや、実際の攻撃での悪用は確認されていません。しかし、その深刻度と悪用の相対的な容易さを考慮すると、潜在的な脅威は非常に大きいと言えます。企業は、この「静かなる脅威」が現実の攻撃に転じる前に、先手を打って対策を講じる必要があります。

緊急の対応策と推奨される緩和戦略

n8nのCVE-2025-68613脆弱性に対する最も効果的かつ緊急性の高い対策は、公式にリリースされたパッチを適用することです。n8nのメンテナーは、この問題を修正したバージョン1.120.4、1.121.1、および1.122.0をリリースしており、影響を受けるユーザーは可能な限り速やかにこれらの最新バージョンにアップグレードすることが強く推奨されています。以前に部分的な緩和策を適用していた環境であっても、根本的な問題が完全に解決されていない可能性があるため、最新版へのアップグレードが不可欠です。

即座のパッチ適用が困難な状況にある場合でも、リスクを軽減するための暫定的な対策が存在します。まず、ワークフローの作成および編集権限を、信頼できるユーザーに限定することが重要です。これにより、悪意のあるユーザーが脆弱性を悪用して不正なワークフローを注入する機会を大幅に減少させることができます。最小権限の原則を徹底し、不要なアクセスを排除することが肝要です。

さらに、n8nを強化された環境にデプロイすることも有効な緩和策です。これには、オペレーティングシステム(OS)の特権を制限し、n8nプロセスが必要とする最小限の権限のみを付与すること、およびネットワークアクセスを厳しく制限することが含まれます。Sangfor FarSight Labsは、未使用の機能モジュールを無効にして攻撃エントリポイントを減らすこと、そしてサービスを不必要にインターネットに公開しないことを推奨しています。

また、システムとコンポーネントを定期的に最新のセキュアなバージョンに更新し、既知の脆弱性が早期にパッチ適用されるようにすることも、継続的なセキュリティ対策として不可欠です。これらの対策は、攻撃者が脆弱性を悪用する機会を最小限に抑え、万が一の侵害が発生した場合でもその影響を限定するために役立ちます。組織は、これらの推奨事項を真剣に受け止め、自社のセキュリティ体制を強化する必要があります。

セキュリティベンダーの動向と脅威インテリジェンスの役割

n8nのCVE-2025-68613のような重大な脆弱性が公表されると、セキュリティベンダーは迅速にその脅威を分析し、顧客を保護するためのソリューションを提供します。Sangfor FarSight Labsは、2025年12月24日にn8nのリモートコード実行脆弱性に関する通知を受け、同日中に脆弱性アラートを発令しました。これは、脅威インテリジェンスが迅速に共有され、対応が開始されたことを示しています。

Sangforは、この脆弱性に対する監視および防御ソリューションを開発し、2025年12月29日にリリースする予定です。具体的には、Athena Network Detection and Response (NDR)、Managed Detection and Response (MDR)、Extended Detection and Response (XDR)などのサービスが脆弱性監視をサポートし、ビジネスシナリオにおける影響範囲をリアルタイムで特定できます。また、Athena Next-Generation Firewall (NGFW)やWeb Application Firewall (WAF)などのサービスは、このエクスプロイトを効果的にブロックする機能を提供します。

Orca Securityもまた、自社のクラウドセキュリティプラットフォームを通じて、顧客が脆弱なn8nバージョンを実行している資産を迅速に特定し、その露出状況を把握できるよう支援しています。Orcaのプラットフォームは、インターネットからのアクセス可能性、ランタイム到達性、資産の重要性といったコンテキスト情報に基づいて、CVSSスコアだけでなく実際の脅威リスクに基づいた修復の優先順位付けを可能にします。これにより、セキュリティチームは最も重要な修復パスに集中することができます。

これらのセキュリティベンダーの迅速な対応は、脅威インテリジェンスの重要性を浮き彫りにしています。最新の脆弱性情報をいち早く入手し、それを分析して具体的な対策に落とし込む能力は、今日のサイバーセキュリティにおいて不可欠です。組織は、このような脅威インテリジェンスを活用し、自社の環境に特化したリスク評価と対策を講じることで、進化するサイバー脅威から身を守る必要があります。

自動化プラットフォームのセキュリティ課題と今後の展望

n8nのCVE-2025-68613のような深刻な脆弱性の発覚は、ワークフロー自動化プラットフォームが直面するセキュリティ上の課題を改めて浮き彫りにしました。これらのプラットフォームは、ビジネスプロセスの効率化に不可欠である一方で、機密データへの広範なアクセス権を持ち、複数のシステムと連携するため、一度侵害されるとその影響は甚大です。サンドボックスの分離不足という技術的な問題は、複雑なソフトウェア開発における潜在的な落とし穴を示唆しています。

自動化ツールは、その性質上、多くのシステムやサービスへの「鍵」となることが多く、攻撃者にとっては魅力的な標的となります。今回のケースでは、認証済みユーザーの入力がシステムの基盤に影響を与える可能性があったことが、その危険性を物語っています。このようなプラットフォームのセキュリティは、単に外部からの攻撃を防ぐだけでなく、内部のロジックや入力処理の堅牢性を確保することが極めて重要であることを示しています。

今後の展望として、ワークフロー自動化プラットフォームの開発者と利用者の双方に、より一層のセキュリティ意識と対策が求められます。開発者は、サンドボックス技術の強化、入力検証の徹底、そしてセキュリティ設計の初期段階からの考慮を継続する必要があります。また、利用者は、プラットフォームの定期的な更新、最小権限の原則の適用、そして不必要なインターネット公開の回避といった基本的なセキュリティ衛生を徹底することが不可欠です。

サイバーセキュリティの脅威は常に進化しており、自動化された環境は新たな攻撃ベクトルを提供し続けています。n8nの事例は、たとえオープンソースであっても、そのコードベースと実行環境のセキュリティを継続的に監視し、迅速に対応することの重要性を強調しています。組織は、脅威インテリジェンスを積極的に活用し、防御を多層化することで、このような高度な脅威から自社のデジタル資産を守るための継続的な努力が求められるでしょう。

参考情報

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