ゼロトラストセキュリティとは?企業が今すぐ導入すべき理由と実装方法を徹底解説

2025-10-08
サイバー脅威研究所 編集部/ セキュリティアナリスト
#インシデント

ゼロトラストセキュリティとは

ゼロトラストセキュリティとは、「信頼せず、常に検証する(Never Trust, Always Verify)」という原則に基づいたセキュリティモデルです。従来の境界型セキュリティが「内部は安全、外部は危険」という前提に立っていたのに対し、ゼロトラストは社内外を問わず、すべてのアクセスを疑い、厳格な認証と認可を要求します。

2010年にForrester Researchのジョン・キンダーバーグ氏が提唱したこの概念は、クラウドサービスの普及、リモートワークの増加、内部脅威の深刻化といった現代のIT環境の変化に対応するため、多くの企業で採用が進んでいます。

なぜ今ゼロトラストが必要なのか

従来の境界型セキュリティモデルには、いくつかの致命的な弱点があります。まず、一度内部ネットワークに侵入されると、横展開(ラテラルムーブメント)が容易になり、重要なデータやシステムへのアクセスが可能になってしまいます。

また、クラウドサービスの利用やリモートワークの普及により、従来の「内部」と「外部」の境界が曖昧になってきました。従業員が自宅や外出先から企業リソースにアクセスする機会が増え、境界を守るだけでは十分なセキュリティを確保できなくなっています。

さらに、内部関係者による情報漏洩や不正アクセスのリスクも無視できません。2024年の調査によると、セキュリティインシデントの約30%は内部関係者によるものとされています。

ゼロトラストの7つの基本原則

ゼロトラストを実装する上で、理解しておくべき7つの基本原則があります。

第一に、すべてのデータソースとコンピューティングサービスをリソースとみなすこと。これには、オンプレミスのサーバーだけでなく、クラウドサービスやIoTデバイスも含まれます。

第二に、ネットワークの場所に関係なく、すべての通信を保護すること。社内ネットワークにいるからといって、安全とは限りません。

第三に、企業リソースへのアクセスをセッション単位で付与すること。一度認証したからといって、永続的なアクセス権を与えるべきではありません。

第四に、リソースへのアクセスは、動的なポリシーによって決定されること。ユーザーの行動、デバイスの状態、リスクレベルなどを総合的に評価します。

第五に、すべての資産の整合性とセキュリティ姿勢を監視・測定すること。定期的なセキュリティ評価が不可欠です。

第六に、すべてのリソース認証と認可を動的に行い、アクセスが許可される前に厳格に実施すること。

第七に、資産、ネットワークインフラストラクチャ、通信の現状について可能な限り多くの情報を収集し、セキュリティ態勢の改善に利用すること。

ゼロトラストの主要コンポーネント

ゼロトラストアーキテクチャを構築するには、いくつかの主要なコンポーネントが必要です。

まず、多要素認証(MFA)は必須です。パスワードだけでなく、生体認証やワンタイムパスワードなど、複数の認証要素を組み合わせることで、セキュリティを大幅に向上させることができます。

次に、IDアクセス管理(IAM)システムが重要です。ユーザーやデバイスのIDを一元管理し、適切なアクセス権限を付与・管理します。

マイクロセグメンテーションも欠かせません。ネットワークを細かく分割し、各セグメント間の通信を厳格に制御することで、侵害の範囲を最小限に抑えます。

また、エンドポイント検出・対応(EDR)ソリューションにより、デバイスレベルでの脅威検知と対応が可能になります。

最後に、セキュリティ情報イベント管理(SIEM)システムで、全体のセキュリティ状況を可視化し、異常を早期に検知します。

ゼロトラスト導入のステップ

ゼロトラストの導入は、一夜にして完了するものではありません。段階的なアプローチが推奨されます。

ステップ1では、現在のセキュリティ態勢を評価します。既存のインフラストラクチャ、データフロー、アクセスパターンを詳細に分析し、保護すべき重要な資産を特定します。

ステップ2では、保護すべきサーフェスを定義します。すべてを一度に保護しようとするのではなく、最も重要なデータやアプリケーションから始めることが効果的です。

ステップ3では、ネットワークトラフィックのマッピングを行います。誰が、何に、どのようにアクセスしているかを可視化します。

ステップ4では、ゼロトラストネットワークアーキテクチャを設計します。マイクロセグメンテーション、適切なアクセス制御、暗号化などを計画します。

ステップ5では、実際の実装を開始します。パイロットプロジェクトから始め、徐々に範囲を拡大していきます。

最後のステップ6では、継続的な監視と改善を行います。ゼロトラストは一度実装したら終わりではなく、常に進化させていく必要があります。

導入時の課題と対策

ゼロトラスト導入には、いくつかの課題が伴います。

まず、既存システムとの統合が困難な場合があります。レガシーシステムがゼロトラストの要件を満たさないことも多く、段階的な移行計画が必要です。

また、ユーザー体験への影響も考慮すべきです。セキュリティを強化しすぎると、業務効率が低下する可能性があります。バランスの取れたアプローチが重要です。

コスト面でも、初期投資が大きくなる可能性があります。ただし、セキュリティインシデントによる損失と比較すれば、投資対効果は高いと言えます。

組織的な変革も必要です。ゼロトラストは技術だけでなく、文化の変革も伴います。従業員の理解と協力を得ることが成功の鍵となります。

まとめと今後の展望

ゼロトラストセキュリティは、現代のサイバーセキュリティにおいて不可欠な要素となっています。境界型セキュリティの限界が明らかになった今、「信頼せず、常に検証する」というアプローチは、企業のデジタル資産を守る上で最も効果的な方法の一つです。

導入には時間とコストがかかりますが、段階的なアプローチを取ることで、リスクを最小限に抑えながら実装を進めることができます。重要なのは、完璧を目指すのではなく、継続的な改善を行うことです。

今後、AIや機械学習技術の進化により、ゼロトラストアーキテクチャはさらに洗練されていくでしょう。リアルタイムでのリスク評価や、自動化された対応が可能になり、より効果的で効率的なセキュリティ態勢を構築できるようになることが期待されます。

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